ワークショップ 核廃絶を実現する軍縮教育ツールを学ぼう!

2008年5月5日 午前10:00~12:30
203会議室



ファシリテーター:キャスリン・サリバン

5月5日、幕張メッセの会場の一番奥、学校の教室ほどもない小さな部屋で行われたこの「軍縮教育ワークショップ」は朝から超満員となり、当初30人だった定員を急遽40人に引き上げて行った。「ワークショップ」とは参加型の学習スタイル。年齢も性別も国籍もさまざまな人々が集まったこのワークショップで一体何が始まるのか、参加者は少し心配そうに、でもわくわくした面持ちで椅子に座っていた。


緊張のせいで少々イントロダクションでは硬かったそれぞれの表情は、初めの簡単なアイスブレイクで一気になごんだ。二人組みになってまずは向かい合って立ち、お互いをよく観察してから背中合わせになり、自分の見た目を三つ変え、それぞれ何が変わったのかをあてるというエクササイズ。ただ空気を和ませるというだけでなく、変化というのは見えやすいものもあれば見えにくいものもあるということに気づき、「積極的に参加する」というのはどういうことなのかこのエクササイズでつかめたよう。


このワークショップでは、核問題に関する知識はあまり教えない。それよりも核問題にまつわる多くの事実を頭だけでなく心でとらえ、世の中を変えていくための具体的な原動力にしていこうというのが目的だ。

「100万」「10億」といった数を聞いても、「たくさん」ということの他にはあまりピンとこないというのが大半の人だろう。「1、2、3・・・58・・・2980・・・・」といったように順に数を飲まず食わずで数えていくと、100万まで数えるのに11日半かかるとは誰も想像しないに違いない。それが10億ともなるとなんと32年もかかるのだ!


数について想像力を働かせたところで、次はリボンを使ったワークショップ。太く赤いリボンの1インチが10億USドルとしたとき、アメリカ合衆国は一体国の予算を何にどれだけ使っているのかを見るというものだ。以下が、アメリカが2006年に費やした予算の一部である:


38インチ(380億ドル)=12歳までの教育
50インチ(500億ドル)=子供の医療


部屋の前に4人のボランティアに立ってもらい、それぞれリボンの両端を持ってもらう。1インチは約2.5センチなので、それぞれ1メートル前後の長さのリボンになった。続けて、同じ年の軍事に使ったお金を見てみる。


594インチ(5940億ドル)=2006年度の軍事費


なんと、リボンは部屋を2周近くもしてしまった。さらに、このほかに2007年3月までにイラクにかけた予算4070億ドル(407インチ)を足すと、さらにリボンは伸びる。


「イラク戦争は石油のため」とはよく聞く言葉。しかし、石油のためにこれだけの予算を使っておきながら、再生可能エネルギーの開発のためにかけた費用は、たったの20億ドル(2インチ)!


「えー・・・!」「うそでしょ!」など、このアメリカの軍事への偏りを視覚的に見て参加者は驚きを隠さなかった。ちなみに、軍事に使ったこれだけの費用をもっとほかの事に使えていたなら、どれほどまでに世界は住み良い場所になっただろうか。


次に行ったのは、キャスリンの得意な「Bee Bee Demo=ビービーデモンストレーション」という、音を使ったエクササイズ。まず、参加者には2種類の音を聞くことを説明する。1つめは、鉄のビービー弾をひとつ、缶に落とす音。「カン」と乾いた音がする。この音は、第二次世界大戦で使われたすべての兵器の火力をあらわしている。戦闘で使われた銃弾も手榴弾も、魚雷も、広島と長崎に落とされた原爆も、このひとつの弾に含まれている。これを説明した後、二つ目の音を聞いてもらった。二つ目の音は、現在世界が所有する27,000発の核兵器のもつ火力に相当する音。ビービー弾にしてなんと、2,225個分である。


二つめの音は目を閉じて聞いてもらった。涙を流す人、ずっと眉間に皺を寄せている人、下唇を噛んでいる人、さまざまだった。その後、感想を聞いてみると、「やめて!と思った」「ただただ、なんで?という感情が沸いた」「怒りが沸いた」「悲しくなった」など、多くの感想を聞くことができた。キャスリンが言うには、このような感情が沸くのは自然のことで、健全な人間であることの証、ということ。これらの感情は状況を変えよう、世界を動かしていこうという原動力となるもので、とっても大事だという。


最後のエクササイズは、参加者が二人組みになって行った。普段の何気ない会話では人の話を聞きながら自分の話すことを考えていたり、会話の途中に割って入ったりするが、このエクササイズでは片方が一方的に話し、もう片方が一方的に聞くだけ。100%話を聞いてもらえるという安心感の元で話し手は話すことができ、またパートナーはいかに言葉を使わずに話を積極的に聞いていくかということが試される。話しをしたお題は以下の4つ。


1)今生きていて本当に良かったと思えることは、○○です。
2)今世界にある核兵器のことを考えると、世界は○○になってきていると思う。
3)今世の中に存在している核兵器のことを考えるとき、私が考えるのは○○という気持ちです。
4)もし世界の核軍縮を現実にする手段や権力が私にあったなら、私は○○をします。


後半では二人の役割を交代した。話す、聴くというコミュニケーションの基本を確認するだけでなく、段階を追って4つの文章を完成させていく中で、夢のような話、非現実的な話も出てきたが、自分のやりたいことやできることへの方向性を確認するには十分だった。


最後には、みんなで丸くなって座り、今日の感想やこれからに向けての決意、未来の夢や希望などを語った。「軍縮教育ワークショップ」とあったからか、将来は教師を目指す若者や既に教職に就いている人がたくさんいた。また、地域で活動を広げていくツールを学びに来た人、なんとなく来た人など参加した動機はさまざまだったが、誰もが自分なりにこのワークショップから具体的に次のステップにつなげていけるものをつかんでいくことができたに違いない。


(文責:高山瑤子)
投稿者:金熊 | 分科会レポート | comments (0) | trackbacks (0)

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